公益社団法人 日本伝熱学会 / The Heat Transfer Society of Japan

「ナノスケール伝熱機能発現とその応用への展望」

主 査 塩見淳一郎 (東京大学)
幹 事 田口良広 (慶應義塾大学)
委 員 大宮司啓文 (東京大学)
野崎智洋 (東京工業大学)
宮崎康次 (九州工業大学)
山口康隆 (大阪大学)
河野正道 (九州大学)
井上修平 (広島大学)
徳増 崇 (東北大学)
山本貴博 (東京理科大学)
野村政宏 (東京大学)

概要:
 本特定推進グループでは,産業におけるニーズを精査し,特定の応用を念頭においたストラテジーのもとに,物性理論解析,ナノ構造合成・観察,熱物性計測の専門家が有機的に連携し,イノベーションのシーズと成りうる新しいコンセプトの考案にもとづいて,共同研究を実際にスタートさせることを目的の1つとする.具体的な研究課題を「ナノ構造による熱伝導の制御」とし,社会的にニーズの高いテーマとして,3次元積層デバイスの熱マネージメントを主な研究対象とする.研究グループは上述の各要素技術を有する伝熱学会内外の研究者および企業の研究開発者によって構成し,その中のサブグループによって熱エネルギーのマネージメントや有効利用に関する大規模予算などの立案・提言ができる体制も整える.
 加えて,長期的視点に立って学術領域としての「ミクロ熱工学」の確立も目指す.学術的な観点から見ると,ナノスケールの空間における,液体,ソフトマターの挙動,あるいはこのサイズの粒界を含む固体などに適用可能な理論が体系づけられていないのが課題である.本来,これらは従来の学術体系からでは発見し得ないシーズが多く眠る分野であるにも係らず,伝熱工学でこれらに取り組む研究者のアプローチは個々が設定した課題に対して各論的に研究が進められているケースが多いため,その可能性が産業界から見えづらく,ひいては若手研究者からみたときの魅力が伝わりにくい状況である.本研究グループでは,既存の理論と現状の研究群を体系的に整理し,今後の研究のロードマップを提案するとともに,将来的にミクロ熱工学の教科書の出版に繋がるような学術を確立することを目指す.教科書の出版は,機械工学における固体物理学や統計力学の基礎教育を底上げする役割も担う.